学会趣旨

【水文・水資源学会について】

水は生命の維持に必須な物質であるとともに、人間の社会的・経済的活動を支える基本的要素の一つである。人類は、古来、これを利用し、またこれと鬪って生産・生活基盤を確立してきた。特に今世紀後半以後の人間活動の飛躍的拡大の中で、人間が水循環に影響を与え、またその反動を受ける事態が生じてきた。水文学は、このような水問題に対処するために必要な水循環の諸過程を観察し、水の存在諸相を解明する学問として形成され発展している。これをより拡大、深化させる一方、関連する社会科学的な立場から、水の計画、管理、保全のあり方を探る水資源研究の育成、発展が展望されている。

従来、この領域の研究は、各学問分野ごとに進められてきた。しかし、最近の研究の著しい進歩により、水循環の物理過程の観測、データ収集・情報処理・現象解析とモデル化・計画管理手法等へのコンピュータの活用、リモートセンシング等の新技術の活用など、一分野に限らない共通の研究課題が多くなっている。

さらに、個々の分野では対応が難しい学問領域の問題、例えば、種々の空間規模での水収支、物質収支、熱収支の解明、土地利用変化に伴う水循環、物質循環の変化と予測ならびに制御、世界的な視点での比較水文学、気候変動の予測とリスクマネージメント、水と緑の価値評価、水問題の社会経済的構造、水に関する法制度など、数多くの問題に直面している。

これらの研究の効率的な推進を図るためには、各分野の成果を糾合して水文・水資源研究を取り扱う共通の場の設定が必要である。これにより、極めて多様な要素が関与する現象を構造的に把握する新しい学問体系をより一層発展・充実させなければならない。

そこで、ここに、地球物理学、気象学、地質学、地理学、土木工学、農業工学、林学、砂防工学、衛生工学、人文科学など、従来の各学問分野で発展してきた体系を縦糸とし、「水文・水資源学会」という横断的な研究組織の創設を企画する。

この新しい学会は、国内における関連学・協会はもとより、国際的な学・協会および研究機構との連携を図り、国際的な研究交流と協力においても先導的な役割を果す。また、会員は、学者、研究者のみならず、官界、民間の技術者にも広く参加・協力を求め、技術現場からの研究課題の発掘と研究成果の社会への速やかな還元を目指す。

以上の趣旨に基づき、本学会は、

・ 学際的かつ総合的研究を重視する。

・ 新技術の開発・応用など、創造的、先導的な研究を重視する。

・ 基礎研究の重視はもとより、実際問題への適用をはかるために、
  学・官・民の研究者・技術者の交流を促進する。

・ 国際的な交流と協力を積極的にはかる。

を4つの柱として、水文・水資源学研究の発展を期する。



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